IEEE CPMT Japan Chapter Young Award 表彰式の報告
ICEP2015において,ICEP2014の際に優れた発表を行った若手技術者に対して,IEEE CPMT Japan Chapter Young Award の表彰を行いました.
1.表彰対象者 4名
(1)受賞者 : Takashi Matsumae
所 属 : The University of Tokyo (Japan)
論文タイトル : TC2-3 Room Temperature Bonding Method for Polymer Films by Surface Activated Bonding Method Using Al Intermediate Layer
【推薦文】
本論文は,有機フィルムを接合対象にする表面活性化接合において,Alを中間層に使用することで,常温接合の接合状態が改善される結果について述べている。従来までのSiを中間層とする方法では,PEN(polyethylene naphthalate)との接合界面にボイドが発生するなどの課題があったが,本論文では,Alを中間層とすることで課題を解決した結果を示している。さらに,Si,Cu,Alを中間層とした場合のT字剥離試験による接着強度とAFMを用いた表面粗さ測定を行い,Alを中間層とする場合のボイド削減の効果は,中間層金属の表面エネルギーではなく,自己拡散の影響が高いことを明らかにしている。これらの結果は,OLEDなど有機エレクトロニクスを対象にした常温接合の実用化に指針を与えるものとして有用である。また,プレゼンテーション内容とその質疑応答においても優秀であったことから,Young Awardに推薦する。
(2)受賞者 : Nurul Adni Ahmad Ridzuan
所 属 : Keio University (Japan)
論文タイトル : TE4-3 A Bio-Inspired Cylindrical Tactile Sensor for Multidirectional Pressure Detection
【推薦文】
人間の歯の生物学的な構造に着想を得て、X、Y、Z軸のマルチな方向での、触覚センシングを可能にしたセンサーを開発した。棒状のプローブと外枠となる筒の間隙に、導電性ポリマーを配置し、プローブが力を受けて動く際のポリマーの変形を利用して、力の方向と大きさを同時に計測する仕組みである。導電性ポリマーは、PDMS中にカーボンナノチューブ(CNT)を分散することにより形成されており、変形によるCNT間の距離変化を外枠の内側表面に形成された電極間の抵抗値の変化として計測するものである。
着想がユニークなだけでなく、「ものづくり」から「評価」、そして「考察」まで、論文の内容は必要十分、かつ、良くまとめられている。加えて、プレゼンテーションは資料、説明とも明快で分かり易く、質疑についても、非常に真摯な態度で丁寧に説明・応答していた。技術もさることながら、発表者自身について、大きな将来性、可能性が感じられ、Young Awardの趣旨に照らして十分に推薦に値すると考える。
(3)受賞者 : Ajayan Mano
所 属 : Waseda University (Japan)
論文タイトル : FD3-3 Room-Temperature Direct Bonding of Graphene Films by Means of Vacuum Ultraviolet (VUV) / Vapor-Assisted Method
【推薦文】
Grapheneは、電子デバイス応用に大きな期待のかかる材料として注目されている。しかし、実用化に向けた加工技術には課題が多い。特にGrapheneの製膜技術だけではなく、原子オーダでのデバイス加工と、特性を劣化させないプロセス技術が必要である。本研究は、早稲田大学およびNIMSの研究チームにより提案された真空紫外光(VUV)による清浄化の後、大気圧水蒸気に露出した後に拡散ボンディングを行う方法を用いている。これにより初めて単層Graphene および積層Graphene 同士の室温ボンディングを行い、特性の劣化がないことを実証した。
Grapheneに関しては近年多くの研究論文が発表されているが、特殊な化学処理をすることなく、VUV処理と水蒸気処理という比較的簡便な室温でのDirect bonding は、新規性が高く今後の応用が期待される。以上より、Young Awardに推薦する。
(4)受賞者 : Hiroki Ishihara
所 属 : Fujikura (Japan)
論文タイトル : FE2-1 High-ON/OFF-Contrast 10-Gb/s Silicon Mach-Zehnder Modulator in High-Speed Low-Loss Package
【推薦文】
シリコン光変調器は、高い屈折率をもつシリコンをコアとする光導波路により大幅な小型化とCMOS加工技術による低コスト化が期待されている。本論文では、10-Gb/sのSiマッハツェンダ変調器をパッケージ化し、その伝送特性を報告している。パッケージング化に際し、素子の長辺側に光の入出力部を配置し、それに対して直線上の進行波電極を設け、配線長を短くすることで広帯域化を図るユニークな構造となっており、電気−光(E/O)応答の3dB周波数帯域は、12.0 GHzに達している。外部レンズ系と、チップ端面に設けられたモードフィールド変換器による光結合系において、斜めから光が入射する構造を採用し、結合損1.9 dB/facet、反射 -31.9 dBという低ロス・低反射特性が達成されている。ユニークな構造に加えて、優れたデバイス特性を実証している点が高く評価できる。将来の実用化にも期待の持てる報告であり、Young Awardに推薦する。
集合写真
2.ICEP2015の概要
- 開催日時:2015年4月14日〜17日
- 開催場所:京都テルサ(京都)
- 主催:IEEE CPMT Japan ChapterとIMAPS/(社)エレクトロニクス実装学会の共催