IEEE CPMT Japan Chapter Young Award 表彰式の報告
ICEP-IAAC2012において,ICEP2011の際に優れた発表を行った若手技術者に対して,IEEE CPMT Japan Chapter Young Award の表彰を行いました.
1.表彰対象者 5名
(1)受賞者 : Masaki Chiba
所 属 : NEC (Japan)
論文タイトル : WC2-2 Cooling Performance of a Two Phase (Vapor-Liquid) Flow Cooling System
【推薦文】
電子機器の発熱密度の増加により、空冷以上の冷却能力を有する冷却システムの開発は急務である。本論文では、気液相変化を利用した高効率な冷却システムの検証を行っている。気液相変化を利用した冷却システムとして、液体輸送に外部動力を用いないサーマルサイフォンと、外部動力としてポンプを利用して液体輸送を行う2つのシステムを比較し、トータルの消費電力と冷却能力のトレードオフに関して詳細な議論がなされている。さらに、ポンプを用いた方が、少ない消費電力で高い冷却能力が得られる場合があることを示している。これは、非常に貴重な知見である。今後の電子機器の熱問題を解決する一つの大きな可能性を示しており、今後の発展も期待できる点を評価し、ヤングアワードに推薦する。
(2)受賞者 : Masao Tokunari
所 属 : IBM Japan (Japan)
論文タイトル : TC4-1 Low-Loss Chip Assembly for Low-Power Optical I/O on Waveguide - Integrated Organic Substrate
【推薦文】
次世代の超高速スパコンでは伝送速度と消費電力の観点から,ボードレベルの光インタコネクションが必要とされる。本論文では100ペタFLOPS級のスパコンをターゲットに電気配線長と光結合の間隙を最短にする光入出力MCMの構成を提案している。有機基板に組み込まれた光導波路と光デバイスアレイを45゜ミラーで結合する単純な方法で平均2.7dBの低接続損失を得ている。実際にベアチップをMCM実装し,10Gb/sまでの伝送を確認しているところが評価できる。また今後の潮流となる可能性が高い1060 nmのVCSELを選択している点も実用化を見据えている。研究の実用性と到達度を評価し,CPMT Young Awardに推薦する。
(3)受賞者 : Tomoaki. Katagiri
所 属 : Sekisui Chemical (Japan)
論文タイトル : FB2-4 Electrical Insulation Materials with Ultralow CTE
【推薦文】
本論文では、エポキシ樹脂に無機フィラを添加し、10ppm/℃という銅より低い熱膨張率を持たせるとともに、通常のビルドアッププロセスを適用できる点について述べている。また、この樹脂はガラス転移点以上の熱膨張率も通常樹脂より低く、ビルドアップ樹脂以外にもソルダーレジストに適用することを考えているとのことであり、昨今の薄型基板のソルダーレジストによる加熱時の反りが実装信頼性を低下させている問題を解決する材料となることが期待され、工業的にも有益である研究報告と判断し、ヤングアワードに推薦する。
(4)受賞者 : Takahito Watanabe
所 属 : Renesas Electronics (Japan)
論文タイトル : FC5-2 A Novel Magnetic Shield Structure for MRAMs with Perpendicular Magnetic Anisotropy
【推薦文】
垂直磁化方式のMRAMに対する静磁場シールドをPKGレベルで実現するために、チップの上下面と側面を磁性体で覆う「コの字型」という新規構造を提案した論文。3次元シミュレーションのみならず、実際にシールドを試作し、材料物性値の補正等も考慮した上で、実測値とシミュレーションの良好な一致を得ている。なぜ垂直方向の静磁場をシールドできるのか、というメカニズムにも突っ込んだ議論がなされており、その先駆的な技術内容と、計算/実測/考察がバランス良く述べられた発表などからヤングアワードとしてふさわしいものと評価できるので、同賞に推薦する。
(5)受賞者 : Maki Inada
所 属 : Hitachi Chemical (Japan)
論文タイトル : FD3-1 Material Technology of Conductive Wiring by Ink-jet Print
【推薦文】
インクジェットを使い、課題となる3次元構造やフレキシブルシートに対して、パターン可能なCu材料を新たに開発した点、そして開発したCu材料でのパターン寸法、抵抗値、pull試験、SIMSを用いた塗布後の断面観察を定量的に評価し、有効性を確認していること。さらには発表者のプレゼンテーションも良く纏められていて聞きやすかったことからこの論文をヤングアワードに推薦する。
集合写真
2.ICEP-IAAC2012の概要
- 開催日時:2012年4月17日〜20日
- 開催場所:東京ビックサイト(東京)
- 主催:IEEE CPMT Japan ChapterとIMAPS/(社)エレクトロニクス実装学会の共催