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2010年のイベントレポート

第15回APEC女性リーダーネットワーク会合における科学技術分野のパネルディスカッション
「女性技術者・科学者のリーダー育成」(2010年9月20日)

我々IEEE JC WIEは,2010年9月20日,第15回APEC女性リーダーズネットワーク会合(APEC WLN)において女性技術者・科学者のリーダー育成」という分科会を企画しました.科学・技術分野におけるこの分科会は,APEC WLN史上初の試みでした.

この分科会はパネルディスカッションの形式で進められました.日本,中国,オーストラリア,チリ,フィリピンで活躍している女性リーダー6人がパネリストに迎えられ,各国女性技術者・科学者の現状,問題点,育成促進の戦略について,活発的な議論が行われ,幾つか重要な結論に至りました.

第15回APEC女性リーダーズネットワーク会合第15回APEC女性リーダーズネットワーク会合

まず,フィリピンの科学技術省前長官であるエステラFアラバウト氏が基調講演をされました.男女共同参画が比較的に進んでいるフィリピンですが,そこに至るまでの科学技術分野における男女参画の長い道なりとその成果を紹介しました.そして科学技術分野における教育と女性の自立の重要性,科学技術分野における女性組織のさらなるネットワーキングの必要性を示しました.

さらに,それぞれのパネリストから7分の発表がありました.司会者でもあるIEEE WIE会長,並びにオーストラリアTelstra Corporation, Network Architecture Reliability Group技術部長を勤めるイレーナ・アトフ氏は,オーストラリアにおける女性技術者・科学者の状況を,@科学技術分野を専攻する女性の数が少ない,さらに,A科学技術分野を専攻する女性の多くは専門分野から離れているという2つの問題が存在すると分析しました.チリCatolica del Norle大学准教授を勤めているエリザベス・フォン・フランド氏は,チリでは工学を目指す女子学生が非常に少ない,工学専攻の女子学生が奨学金を受けにくいなど現状を厳しく指摘しました.中国青島大学副学長シャオ・フォンジン氏は,科学技術分野における中国の女性参入の成果を披露し,トップレベルの女性技術者・科学者はまだ不足している,受賞者もまだ少ないという課題を示しました.また,東京工業大学学術国際情報センター教授山口しのぶ氏,リコーITソリューションズ株式会社取締役会長執行役員である国井秀子氏もそれぞれ,日本における女性技術者研究者の現状とその問題についてそれぞれ述べました.

会議の後半では,司会者または会場からの質問に答える形で,パネルディスカッションを行いました.「女性技術者・科学者が少ない原因は?」,「なぜ女性のキャリアが伸びにくいか」,「現状を改善するためにどのようなアクションを取ればよいか?」などのテーマについて,熱い議論が繰り広げられました.最終的に,以下4点の結論に至り,科学技術分野の分科会からの提言案として提案することになりました.

  • 科学技術分野へ女性の参加を高めるための国や地域レベルの戦略・政策作りを推進すること
  • 同分野で成功した女性をロールモデルとしてハイライトする機会を増やすこと
  • 同分野に女性の参加を評価する統一した指標を樹立し,監視と年次報告を強化すること
  • 男女平等を実現するためのAPEC政策オプションを開発すること

本分科会ではTwitterアカウントも用意されており,会場からTwitterを通じてリアルタイムに質問がなされるとともに、ハッシュタグを付けての多数のtweetsも寄せられていました.その様子は会場のサブスクリーンに流され,大変盛況でした。

終了後のアンケートでも「各国の話が聞けてよかった」,「日本の遅れている状況が再認識できた」,「トップの決断の重要性を感じた」との意見が寄せられ,97%の参加者が「非常に良い」,「良い」と回答した大好評のディスカッションとなりました.

本議で議論された問題と経験,及びさまざまな成功事例は多くの女性によって共有することができ,4項目の提案はAPEC参加国首脳への発信だけでなく,次世代へのメッセージとなりました.科学・技術分野におけるこの分科会は,画期的なイベントとしてAPEC WLNの歴史に残るでしょう.

第15回APEC女性リーダーズネットワーク会合

IEEE JC WIE: reported by Jien Kato (Nagoya University)

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