WIE Japan
IEEE
Japan Council Women in Engineering Affinity Group
パネルディスカッション「企業における女性のキャリアの築き方」(2008年6月18日)
パネルディスカッションは、2008年6月18日、お茶の水女子大学 本館大講義室にて開催され、企業で活躍する4名の女性技術者に、キャリアの築き方と、人生の楽しみ方について話題提供頂いた。110名を越す参加者があり、その半数は学生であった。
最初に、2008年3月にWIE主催の講演会でご講演頂いた、お茶の水女子大学学長の郷通子先生にご挨拶頂いた。大学などの教育研究機関でリーダーとして活躍する女性の割合に比べて、企業の管理職などで活躍する女性の割合はさらに少ないため、これからは企業でリーダーとして活躍できる女性も積極的に教育していきたいと述べられた。
東京国際大学言語コミュニケーション学部教授の成田真澄先生の司会のもと、四名のパネリストに、一人5分ずつ話題提供頂いた。トップバッターは、(株)東芝研究開発センター技監の土井美和子氏。ヒューマンインタフェース(HI)をキーワードに、文書処理、VR/CG、デバイス、ウェアラブル・ユビキタスと多くの研究開発に携わり、30年間ずっと続けてきた。最後に、御輿を担いでいる写真を通じ、プライベートの一端をご紹介頂いた。
二番目は、日本電信電話(株)主幹研究員の辻ゆかり氏。研究所の他、法人営業、MIT Sloan Fellows Programなどを幅広く経験され、研究だけでなくその成果を社会に展開されている。いつも考えていることを三点にまとめ述べられた:1) 多様性を受け入れる、多面的に考える、2) 今を大事に、自分で優先順位をつけ、選択する:3) はじけるときははじける。三つ目を象徴するものとして、ハロウィーンパーティーの時の仮装の写真を示された。
続いて、日産自動車(株)PV第二製品開発本部設計部ループ主担、初鹿野久美氏。早稲田大学大学院修士課程を修了後入社、一貫して車体設計に携わっている。研究所ではなく、時間に追われるライン設計での課長では初めての女性である。現在2歳になる子供と夫と一緒に出勤、家族一緒に帰る毎日である。車を買うかどうかの最終決定権は奥様が持っていることから、女性の視点は重要で、日産は女性の能力活用を推進している。
最後は、(株)リコー研究開発本部スペシャリストでWIE Japan Chief Secretaryである橋本隆子氏。お茶の水女子大学理学部化学科卒業後入社、データベース分野、マルチメディア関係、研究企画に携わってきた。これまで働き続けてこられた理由は、上司と職場の理解がある企業風土、仕事へのモチベーション、身近にロールモデルと仲間がたくさんいること、信頼できる母親仲間のネットワークと家族の協力体制があることと述べた。
話題提供の後、事前に参加者から集めた質問を整理し、一人ずつお答え頂いた上で、フロアからの質問を受け付けた。
Q1) 現在のキャリアを、学生時代どのように選んだか?
A1) 就職するとき、周囲には銀行や証券のシステム系に行く人が多かったが、バブルの後には何かがあると考え、業務内容の幅が広い会社を選んだ(辻)。自分で使うもの、身近な車を作りたかった。大学院に進学したのは、人と違う何かを身につけてから会社に入った方がよいと考えたため(初鹿野)。
Q2)困難な障害にぶつかった時、それをどう乗り越えたか?
A2)大変だと思ったのは、リーダーになった時。一緒に仕事する人のため、自分に余裕を持たせるよう努力した(土井)。子供が小さい今が壁なのだと思う。それでもみんなに協力してもらいながらなんとか頑張っていられるのは、それまでの自分の働き方や築いてきた信頼関係があるからではないか?(初鹿野)
Q3) 仕事と育児もしくはプライベートとの両立のやり方は?
A3)裁量労働制、フレックス勤務制を活用している。夕方に(公私含め)社内外での交流を深めるときは、朝4時や5時に起き一仕事して、それから会社に行って仕事をしている(辻)。子育てをしているといろいろなストレスが発生し、ストレスが分散するので、かえって良いと思う(橋本)。
Q4) 職場の中での仕事の進め方について、女性ならではの強みはなにか?
A4) 人の気持ちを察知することは、女性の方が強いのではないかと思う。多様性を受け入れることができる(橋本)。おばさん、おじさん、をしっかりやって、生活感を商品開発に反映させるのは大事ではないか。仕事では、その人が得意なことをやってもらうことを心がけている(土井)。
Q5) 結婚していないが、これから先ずっと働いていきたい。いつ子供を産めばよいか?
A5) ブランクがあっても差が開かない若いうちか実績を出してからのいずれかがよい。体力に自信がない人は若いうちがお勧めである(初鹿野)。いつ産んでも大丈夫だと思う。今はいろいろなロールモデルがいるので、参考になると思う(橋本)。
Q6) どのようなことを意識してコミュニケーションを図っているか?
A6) 挨拶された時に目を見て返すこと。忙しくしていると、いつの間にか、自分には近づかないでくれというオーラが出てしまう。気づいたらオーラを下げて、声をかけてもらえるように気をつける(辻)。すれ違ったとき、挨拶だけでなくて、何か一言言う。また、自分からいろいろな人に話しかけて話を聞き、うなずく(土井)。
Q7) これから図太く生きていくための応援メッセージを。
A7) 得意なことを伸ばすことも大事だが、今までやったことがないことをやってみて得意にする(土井)。今を楽しむのが第一。そうすると、明日もっと楽しいことがある(辻)。楽しく仕事をする。別の環境に自分をおくチャンスがあったらできるだけ行って欲しい(初鹿野)。自分の経験を踏まえて、ちょっと無理だと思ってもやってみる。ストレッチな目標をもつ(橋本)。
最後に、WIE Japan Chairである國井秀子より、挨拶とWIEの紹介があった。今日のパネルで、女性を活用すれば大きく発展できると確信したと述べた。IEEEは全世界で37万人以上のメンバーがいる学会である。その中で、女性技術者・研究者の育成・支援に貢献するWIE (Women in Engineering)のグローバルなコミュニティの一員にと、参加を呼びかけた。
総合司会と書記を兼ねた、WIE Japan Vice Chairである大武美保子は、記録に残すことがはばかられるほど率直なコメントが飛び交い、元気の出るパネルディスカッションとなった、活字にならない話を聞ける企画を今後も立てていきたいと述べ、パネルディスカッションをしめくくった(*)。
会場でアンケートを行ったところ、「働く女性の生の声を聞くことができてよかった」、「キャリアを考えるきっかけになった」、「元気になった」などの感想が集まり、92名中90名が満足したとの回答を得た。
(*)従って、活字になったのはパネルディスカッション全体の一部である。
(報告 大武美保子)
英語での講演報告