Women in Engineering設立一周年記念講演会ならびに交流会

講演会は,東京工業大学大岡山キャンパスの講義室にて開催され,北海道大学の長谷山美紀教授,Hanyang 大学の Yong-Jin Park教授より話題提供いただいた.

長谷山美紀教授 (北海道大学, IEEE Region 10 WIE Coordinator)

講演題目: 工学系女性研究者が生活を楽しむための方法

前半は,日本の理工系分野における男女共同参画の現状について,男女共同参画 学協会連絡会による調査データや男女共同参画白書等をもとに,具体的に示され た.後半は,女性研究者のキャリアデザインの例として,ご自身のこれまでの経 歴と研究内容をフレンドリーモデルと名づけてユーモアたっぷりに語られた.物 事を決める時に順位をつけて,1位のみを選択するという方針でこれまで来たが, これからの人は2位以下も手に入れて欲しいという,次世代への熱いメッセージ を頂き,聴衆はとても励まされた.

質疑応答:

Q.物事を決める時に順位をつけて,1 位のみを選択するというのは自分もやっている.それで,1 位の候補を選 んだ後に他の選択肢が出て来た場合,どうしているのか.

A.その選択肢と 1 位を比較して良い方を取る.しかしそれが幸せな生き方かと聞かれると必ずしもそうとも言え ない.

Q.大学以降の女子学生を増やす取り組みはわかるが,それ以前に高校生などに対する働きかけはどう考えている か.やはり母数がないとどうしようもない部分がある.

A.高校生ではなくて中学生に対する取り組みを行っている.今は,工学は完成された製品としてしか考えられて いない.メディアの影響も大きい.しかし,工学にはこんな面白いことがある,という夢を伝えていきたい.

Q.より活躍しやすい外国に移るということについてはどう思うか.

A.友人の女性研究者はアメリカで永住権を取った.日本人研究者はその傾向が強い.自分もアメリカにいた時, 永住権取得についてかなり前向きに考えた経験がある。

Prof. Yong-Jin Park (Hanyang University, IEEE Region 10 Conference Coordinator)

講演題目: 最近の韓国のIT事情

最近の韓国のIT産業およびインターネット事情について話題提供いただいた.ま ず,韓国の電子産業,携帯電話サービス,ブロードバンドサービスの伸びを示す データを示した上で,徹底した成果主義と社内人材育成の充実がもたらすサムソ ンの強さの秘密について語られた.そして,情報ネットワーク技術が急激な社会 の変化をもたらしていることについて,電子政府,ゲーム産業,インターネット 政治,オンラインバンキングなど,具体的な例を挙げて解説いただいた.

一見女性研究者のことと直接関係がなさそうに見えるが,急成長を遂げてシェア をあげるにはどうしたらよいかという見方をすると,とても参考になるお話であっ た.

質疑応答:

Q.E-government によってどのくらい経費削減になっているか.また,インターネットが大統領戦に強く影響した ことなどについて,国民感情はどうなのか.

A.経費削減については正確な数字は持って来ていないが,かなり削減になっている.また韓国では今,価値観の 変化がとてつもなく速くなっている.何もかもが急激に変化している.出生率も,日本のようにじわじわとではな く,急に 1.08 まで落ちた.

Q.ネットでノムヒョンを支持する声が大きかったというが,残りの人の意見は反映されなかったということにな るのか.

A.若い人達が非常に大きな力になったということは確かだ.

Q.サーチエンジンやポータルサイトで,韓国由来のものが強い理由は何か.戦略的なものか.

A.一般ユーザが何を望んでいるのかを素早くキャッチして反映するようにしている.例えば Yahoo は非常に応対 が遅かった.

Q.サムスンの女性エンジニアはやはりバリバリやっているのか.

A.バリバリやっている.そもそも長く会社にいようと思っていない.競争が非常に激しいので,会社でいかにキ ャリアアップするかということだ.

Q.スピンアウトして会社を興す人もいるのか.

A.スピンアウトする人もいるが,他に転職する人も多い.サムスンを出ればどこでも就職できる.

Q.韓国では ADSL が普及しているが日本では光ファイバが主流になりつつある.韓国では今後どうなのか.

A.速度の点でこれからは光ファイバに移行せざるを得ないし,移行していくだろう.

講演会の後,会場を百年記念館に移し,交流会を開催した.交流会には,人工知能,ソフトウエア工学,電子工学 ,ロボティクス,医用工学,機械工学,外国語学,社会学等,多様なバックグラウンドを有する約30名の参加者が あった.IEEE Japan Council Treasurerの橋本秀紀先生より一周年を祝うご挨拶いただいた他,参加者ひとりひと りが簡単に自己紹介を行い,交流を深め,盛会のうちに終了した.

委員一同,発表者ならびに参加者の皆様に感謝申し上げます.今後のイベントへのご参加を心よりお待ち申し上げ ます.

(報告 大武美保子,討論記録 尾川 順子)